タイトルMemory;54☆「王座の王」
【登場人物】4名+侍女達
クラウス・G・S・イングヴァルト ヴィルフレッド・エレミア オリヴィエ・ゼーゲブレヒト
魔女クロゼルグ
エレミヤの手記に記された過去が明かされていく。現代のヴィヴィオ達は一切登場しておらず、クラウス・オリヴィエ・ヴィルフレッド達がどのように生きていたかを描いた1話であった。
<扉絵考察>
上空に描かれているのは「ゆりかご」であり、地上にいるクラウスが「ゆりかご」を見上げている。その表情は険しく快く思っていないことが分かる。クラウスに寄り添っているクロゼルグは、不安の表情でクラウスを見つめている。明るさがなく、ただクラウスと共にいることで不安を拭おうとしている様子である。ヴィルフレッドの視線はオリヴィエに向けられており、彼女を守ろうとする想いの強さが表れている。そして、オリヴィエは決意の眼差しで前を見ている。自分が成すべき事を見つけたようでもあり、「ゆりかご」が進む道と同じ方向に歩もうとしているようにも見える。
<ゆりかごの王>
王になるのは誰なのか?
王女継承権が低いオリヴィエが王になることはないと確信していたクラウスと、オリヴィエの笑顔を守ることを自分の誓いとしていたヴィルフレッド。そんな中、オリヴィエはゆりかごへの想いを強くしていた。
「ゆりかご」の王になる者は、聖王家の血族から選ばれることになる。聖王家を代表とする象徴的な存在になるのである。聖王家が聖王連合として組織されていることから、王族達による族派グループが多数別れているものと思われる。「王座の王」になるということは、その王の血族が聖王家内で高い地位を得ることにもなるのだ。「ゆりかご」起動の発令から半年たっても、王が決まらないのは、利権を巡り、候補者選抜に時間がかかっていたからではないだろうか。
<シュトゥラの姫騎士>
後に武技において最強を誇ったと言われることから、騎士として出陣した際には無敗で勝利していたのだろう。彼女の武勇伝が近隣諸国に広まっていったのも、その功績によるものである。
また、オリヴィエがシュトゥラの兵に好かれていたこと。彼女の人柄が穏やかで優しいことが記されている。もはや、オリヴィエは“人質”ではなく、シュトゥラの一員として誰もが認める存在であったのだ
<叶わぬラブロマンス>
クラウスとオリヴィエ…若く勇ましい王子と強く美しい王女。ともに仲が良く信頼し合う仲であるならば、恋心が生まれるのは必然! 傍にいるヴィルフレッドだけでなく、オリヴィエの侍女達も2人の結婚を期待していたことから、誰もが認めるベストカップルなのだろう。ただ、クラウスは恋人になりたいとする素振はみせていなかった。まだ“親友”として共にいることで幸せを感じていたものと思われる。
まっすぐで正直なクラウスなら、恋心を抱けば態度に表れる筈である。周囲の期待に気づいていないものの、花婿選定の時期がきた時には、オリヴィエを意識したことだろう。
ただし、オリヴィエは、クラウスと結ばれる未来を望んではいなかった。オリヴィエの心には、「ゆりかご」があったからだ。
<明かされたヴィルフレッドの性別>
クラウスは、初めて会った時からヴィルフレッドは“男性”であると認識していた。男同士であるからこそ、クラウスは全力を出して勝負ができたのである。オリヴィエへの顔面攻撃はできなかったことから、女性に対しては礼儀をわきまえていたことが分かる。ヴィルフレッドの性別を知っていたのは、オリヴィエと侍女達だけのようなのだが、お世話係りとして傍にいる者は、女性であることを知っていたものと思われる。オリヴィエがクラウスに話していないのは、ちょっとした悪戯なのであろう。
<ヴィルフレッドとオリヴィエ>
クラウスには明かさなかった「ゆりかごの王」になるという意志。クラウスの元を去ることを覚悟していたのだ。クラウスの性格なら、きっと「ゆりかごの王」になることに反対すると分かっていたから、まずヴィルフレッドに打ち明けたのである。そしてヴィルフレッドにクラウスを託したのである。それだけ、ヴィルフレッドの事を信頼していたのだ。
オリヴィエの幸せを願うヴィルフレッドは、将来クラウスと結ばれて生涯シュトゥラで生きることを願っていた。
一人の女性として生きて欲しかったのだ。
<戦乱の悲劇を止める為に>
聖王連合対反聖王国家…聖王家と関わりのあるシュトゥラが狙われたことで、身近にいる者達が傷つくことを自分の責任としてオリヴィエは感じたことだろう。自分ができる事で平和が訪れるなら……「ゆりかごの王」になることが自分の使命であると強く思った筈である。

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